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服の印象は「ネックライン」で決まる!見落としがちな重要ポイントを徹底解説~2,ネックラインについて①~

更新日:7月15日

「このネックライン、なんか違うんだよな…」


デザイナーが首を傾げ、そう呟く光景を、あなたはきっと目にしたことがあるだろう。

ネックラインのたった1本の線

この小さな部分が、実は服の印象を大きく左右し、ときに製品の「顔」を台無しにしてしまうこともある。

前回と少し間が空いてしまったので今一度明確にするが、私の投稿の目的は「商品が見えるハンガーイラスト」の描き方である。

では、ネックラインで「商品が見える」とはどういうことなのか?

そもそも、ネックラインの絵に「上手い下手」なんてあるのだろうか? ■ネックラインを描くための必須知識

受け取り手とのコミュニケーションを必要とする以上、説明の為に各部位の名称を知っておく必要がある。

「この天巾だと絵型のような衿は付きませんよ」 「もう少し前下がりを上げないと着る人を選ぶかもしれません」 といったやり取りはよく耳にする。

これらに対し 「無理のない様に、自然に作って下さい」 と、ある程度技術者の裁量に任せてしまうのが最善であることも多いがこの時に、 「よく分からんから任せよう」で思考停止してしまうのは、自身の成長を妨げ、非常に勿体ない。

服の「顔」とも言えるネックラインを理解し、適切に表現するためにも、まずはその構成要素をおさらいしよう。


ネックポイント(NP/N.P): 首の付け根にある重要な基準点。一般的にNPと言われれば首の横のポイントを指すが厳密にSNP(サイドネックポイント)と表記すればより親切である。前身頃中心のFNP(フロントネックポイント)や後身頃中心のBNP(バックネックポイント)など、複数のポイントがある。


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・天巾(てんはば):一般的には後身頃のNP~NPを直線で計測した寸法。このわずかな幅が、首の開き具合や見た目の印象を大きく変える。

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下がり(前下がり・後下がり):ネックラインの深さ。NPからFNP/BNPまでのY差。この深さによって、デコルテの見え方や背中の抜け感が決まる。

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首周り:明きの無いプルオーバーや第一釦まで留めるシャツなどでは非常に重要になる寸法。適切なゆとりがなければ、そもそも着ることができない。


■デザインと仕立てで劇的に変わる、衿ぐりの表情

ネックラインは、衿が付く場合付かない場合で、必要とする情報が大きく変わる。今回は純粋に、衿の付かないネックラインにフォーカスして話を進めよう。

一口に「ネックライン」と言っても、そのデザインは多種多様だ。ここでは、市場でよく見かける、つまりあなたが描く頻度の高いデザインをいくつかピックアップしたい。


・丸首(クルーネック)

もっとも一般的な基本となるネックライン。

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・Vネック

前下がりがVになっている。これにより裏バインダー始末やパイピング始末の難易度が上がる。切り込みを入れるため不安定な生地では注意が必要。

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・ボートネック

NPでのラインのつなぎ方が綺麗に上がるかどうかのポイントとなる。

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・Uネック

形状は丸首の延長だが何㎝からUネックという明確な規定はない。どこまで下げるかはブランドの方向性による。

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・スクエアネック

難易度の高い角が二つあるため裏バインダー始末やパイピング始末はおすすめできない。Vネック同様切り込みを入れるため不安定な生地では注意が必要。

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など、それぞれが持つ印象は全く異なる。これらのデザインを、ハンガーイラストでいかに正確に表現するか、それが「伝わる絵」の第一歩だろう。

そして、ネックラインの表情を決定づけるもう一つの要素が「始末(しまつ)」だ。


・見返し始末: 別布や表地で「見返し」と呼ばれるパーツを作り、ネックラインの裏側に縫い付けて処理する方法。芯地を使用する事ができ厚みが出て、しっかりとした印象になる。

ネックラインにステッチを出したくない場合は裏コバstで対応する。裏無しの場合、見返しの端の始末まで言及していれば感動する。

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・即裏始末: 見返し等は無く、表地からすぐに裏地を縫い付けて処理をする仕様。 表地が厚い場合や逆に透けてしまう場合に用いる。 見返し始末同様にネックラインにステッチを出したくない場合は裏コバstで対応する。

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・裏バインダー始末: 衿ぐりの端を共地、別地(もしくは加工テープ等)で始末する仕様。

(ほぼ)必ず表にステッチが出てしまうが始末は裏側に回るので5㎜等の細巾にしてしまえば上品な印象を与えることもできる。一度パイピングしたものを裏に折り込む始末もあるが縫い代が多くなるので図の様に流し込むことでスッキリ上がる。

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・パイピング始末: ネックラインの端に共地、別地(もしくは加工テープ等)で挟みこむように始末する仕様。落としミシンによりステッチを出さない事もできるが技術的制約がある。

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・断ち切り:ネックラインの端を切りっぱなしにする方法。素材の特性を活かした、よりラフでカジュアルな印象を与える。製品としてNGがでることも多いがステッチをかけるなどしてほつれを抑制する。

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■まとめ:ネックライン一つで、服の「印象」は激変する

以上を前提知識としてネックラインの絵を描いていくのだが今回はここまで。 ネックラインは、着用者の顔周りの印象を大きく左右し、服全体のバランスと雰囲気を決定づける。だからこそ、単に「絵を描く」だけでなく、その背景にある知識を理解し、細部まで丁寧に表現する意識が求められるのだ。

今回はネックラインの基礎に焦点を当てたが、次回は実際に描く際の注意点などを実体験と共に説明したい。


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