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<1,着丈について②>

執筆者の写真: 大輔 岡部大輔 岡部

更新日:1月28日

下記添付画像は今回使⽤するレディースブランドのハンガーイラスト+仕様説明である。



これから製図するというのであればの頭の上に「!?」が出てくるのが分かる。

意図的に少し難解なハンガーイラストを用意したがこのような依頼は決して珍しくない。

前回では着丈がどこを指すか明確にしたのでそれらを踏まえ問題を再現していく。

■絵をかみ砕く

このハンガーイラストでは着丈65cmの指⽰でその他の仕様やバランスは⼀般的にとの事。

「一般的に」というかなり幅広く解釈できる言葉だが裏を返せば「違和感なく」とも取れる。

するとここである違和感に気付いてほしい。

「この絵の着丈は65cmもないのでは?」

だ。

絵なんだからそんなに厳密に65cmのバランスに描かなくても…とのお声も理解できる。

実際完全に現物と同じだと逆に違和感を覚える場合もあるがそれにしてももう少し整えたい。

全体的に⼀般的なバランスであるなら肩巾、袖丈も⼀般的な寸法だろう。

肩巾が38㎝、袖丈を58㎝と考える。(裄丈77㎝)

肩パッド&裄綿の有無、袖山の縫い代倒し方向で袖口の位置が2.0㎝前後上下するが今回は肩パッド有り裄綿有り袖山縫い代は袖高と考える。

袖⼝位置と裾位置が概ね同じということはこの絵の着丈は60cmにも満たないことになる。

下記3D画像は着丈58㎝のノーカラージャケットだ。絵の通りとするならこれくらいの仕上がりだが指示は65㎝だ。





■この時に何を考えるか

「絵と⼨法はどちらを優先させたら良いか」

絵の着丈は58cmくらいだろう。だが、着丈というのはなんとなく決められるという事は無く明確な意思決定のもと記載されるのだからそもそもぶれることはあまり無い

「そうなると⼨法重視だろうか、丈だけ延ばしたらポケットと第⼆釦が裾と開き過ぎるな。全体的に⼀般的ならこの場合念のためフラップの位置、釦位置及び衿の前下がりのバランスが絵と変わることを伝えないと…」

当然これらの思考は沸いてくる。

下記添付画像は単純に裾だけ着丈65㎝にした時の思考例だ。①が最も重要度が高く②③と徐々に下がっていく。ベンツの長さの重要度が低いのはパターンにした時修正が容易なのと全体に及ぼす影響力が低いからだ。



分からない事があったら聞けば良いだけの話だが即座に返答いただけるケースは稀である。

今回のケースは丈だけではなくそれによりポケット位置、第一釦位置、第二釦位置、ベンツ止まり位置が関係してくるので質問ラリーを最小限にするためにある程度何通りかの結果を想定しておく必要がある。

ジャケットを担当するということはそれなりに経験を積んでいるので「それくらいの事は」と思えるだろうが何らかの事情で1年目からこの状況に当たることもあるだろう。

(メーカーだと社内で⼊社時期が遥かに上の先輩に聞く時はお伺い⽅法と時間に注意するようになんて話も⽿にしたこともあり大変だ。)

■着丈65㎝の裾位置

では着丈をどのように描くべきだったのだろうか。



着丈だけを考えるならこの裾位置で問題ないだろう。

それに伴いポケット位置(ダーツ含め)、第一釦位置(ラペル形状含め)、第二釦位置、ベンツ止まりを調整した。

これで仕事相⼿が着丈で悩んでいたリソースを別で使い商品のクオリティをより上げられる可能性を開いたのである。

しかしながらいきなり「この裾位置で問題ない」と言われてもなぜその位置なんだといった課題が残る。

これについては次回、テンプレボディを使ってより正確な着丈設定をしてみる。

今回は絵を受け取った人は袖丈、袖口位置と身頃裾位置を意識しているといったことをご理解いただけたら幸いである。


※注1

着丈の計測位置がズレているのではなく下記画像のように重なりがあるためズレているように見える。



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